東アジアで糖尿病患者が急増するのは

中国で糖尿病を発症する人の数が増加傾向にあります。2010年に中国の18歳以上の成人の内1億1390万人が糖尿病を発症したと推定されています。「糖尿病の可能性が否定できない」つまり糖尿病予備群を含めると4億9340万人の中国人が糖尿病あるいは予備群ということになります。人口が約13億4000万人の中国人の食習慣やライフスタイルの大幅な変化によって、糖尿病や生活習慣病などの慢性疾患にかかっている人口は2億6000万人とも言われています。

日本では2007年に「糖尿病が強く疑われる人」が890万人、「糖尿病の可能性を否定できない人」が1,320万人で合わせると2,210万人いると推定され、現在はもっと増加していると考えられます。2030年までに糖尿病患者は1,000万人を超えると予想されています。

糖尿病の3大合併症のひとつである糖尿病網膜症で年間3,500人の患者が失明しています。また人工透析を導入するきっかけとなる疾患の1位に糖尿病性腎症があります。糖尿病はただ血糖値が高くなる疾患ではなくて、全身の血管障害から合併症を招きやすくします。

糖尿病の大部分は遺伝と生活習慣から発症する2型糖尿病で、「インスリン分泌障害」と「インスリン抵抗性」が糖尿病発症に重要な役割を果たしています。欧米人の糖尿病患者ではインスリン抵抗性が多く認められますが、日本人や中国人を含めた東アジア人ではインスリン抵抗性がそれほど強くなくても糖尿病を発症することが多いのです。

欧米人と比較すると東アジア人のインスリン分泌能は2分の1程度と言われています。インスリンの分泌量が十分でないと、糖が脂肪細胞に貯えきらずに血中に残ってしまい糖尿病を発症しやすくなります。欧米人のようにインスリンの分泌量が十分な場合は、血中の糖が脂肪細胞に無駄なく取り込まれ極度の肥満にもなります。欧米でベッドから起き上がれないような肥満の例がありますが、東アジア人ではそのような状態になる前に糖尿病を発症して太れなくなってしまいます。

なぜこのような体質の違いがあるのでしょうか。欧米の肉類や乳製品の多い高脂質症は多量のインスリンを必要とします。東アジアでは農耕の発達によって穀類中心の食生活を送っていたために少量のインスリンしか必要としないので、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞がそれに順応したと考えられます。

これから日本を含め中国やインドが豊かになり、欧米式の生活習慣が浸透して行くと糖尿病を始めとする生活習慣病患者の増加に拍車がかかることになるのではないでしょうか。